ひきこもりは出家である

 

 

杉本:やっぱりそう考えると次の一冊が楽しみですね。さっきの話がいよいよ、というか。ひきこもりは出家なんだ、という。その骨組みみたいなものを構築して出されるのを大いに期待したいところですね。

 

勝山:そうですね。

 

杉本:その時はおそらく勝山さん50歳になった頃には僕、もう60なので(笑)。はははは(爆笑)。

 

勝山:いや、まだまだですよ。79歳まで生きますから。

 

杉本:はっはっは。ひきこもり。60歳のひきこもりっていまだかつてないんじゃないかな(笑)。

 

勝山:いやもう、その頃にはいると思いますよ(笑)。10年後には。今はいないかもしれないけれど。

 

杉本:名乗りを上げてないだけでね。

 

勝山:というか、年金が出ちゃったらもうひきこもりという感じじゃなくなりますからね。

 

杉本:とにかく普通に働かなかっただけなんだよね、ボクってね(笑)。

 

勝山:ひきこもりのゴールをくぐった人たちがいっぱい出てくるんじゃないですかね。無事年金生活にたどり着いた人たちね。「もうゴールしたよ」という人たちですね(笑)。

 

杉本:勝山さんも書かれてますけどね。ゴールが向こうからやってくる、って。

 

勝山:やってきますよ。65歳でゴールですから。

 

杉本:60ではダメですね。下手したら70くらいまで引き伸ばされちゃうかもしれないんで。

 

勝山:そうですねえ。年金はね。

 

杉本:まだ安心できませんわね。

 

勝山:うん。大変だ。

 

杉本:だけどね。まあでも、こういうくだらない話ができて、笑っていなくっちゃあ。やっぱりひきこもりやった甲斐がない、というね。

 

勝山:そのとおりですよ!! これが「ひきこもり資産」ですからね。これが宝ものです。こういうことをやってないひきこもりは、ちょっと困ったなと思いますね。何のためにひきこもってるんだと。これだけ精神的な自由を持って、こういう誰の需要もない、この創造というかね、クリエイト。これに費やさなければ意味がない。

 

杉本:そうですねえ。

 

勝山:だって、みんなこんなことできないんだから。ちゃんと働いていたら。

 

杉本:へへへ。

 

勝山:こんな暇はない! ねっ? これも2回目ですからね。2時間以上話して。こういうのをね。

 

杉本:もはや4時間になろうかと。ああ、4時間半超えてる(笑)すごいな、これ。

 

勝山:これも働いてないからできることなんです。

 

杉本:というか、これどうやってまとまるんだろうという不安が相当高まって来ています。

 

勝山:適当にはしょって。そこは。

 

杉本:僕も鬼ですからね。下手したら全部起すかもしれませんよ(笑)。かつてないです。3時間半まではありました、いままで。さすがに3時間半にもなると苦行に近くなってきたけど(笑)。4時間半は最高記録です。

 

 

 

在家の人たちの心の持ちよう

 

 

 

勝山:じゃあ、そろそろまとめますか。

 

杉本:僕が呼びかけておいてこんなこと言ってもらってしまうのも何なんですけどねえ。すみません、本当に。

 

勝山:とんでもないです。

 

杉本:まとめ(笑)これ、どこら辺にしましょう?(笑)

 

勝山:(笑)。

 

杉本:やっぱりね。難しいんです。うん。結局「これでいいんだ」というのはわかってるんですけど、「世間様が許さない」というのが(笑)ありますのでね。

 

勝山:在家の問題ですよ。

 

杉本:在家の問題なんだ(笑)。あ、ここに答えが見つかりましたかね、いま。

 

勝山:ええ。「在家の人たちの心の持ちよう」ですよ。こういう私たちをね。だってオレンジの服来た人たちいるじゃない? タイとかミャンマーにいっぱい。

 

杉本:ああ、うんうん。

 

勝山:あの人たち、日本人より貧しい人たちからもらっているわけじゃないですか。

 

杉本:だってあの人たち、くれない方がおかしい、という話なんでしょ?

 

勝山:日本人より全然貧しい人たちが自分たちのものを分けてるわけです。オレンジの人たちにね。

 

杉本:そうそう、そうそう。

 

勝山:でも、あのタイとかミャンマーの人たちより豊かな日本人は私たちに1円もあげたくないということでしょう?

 

杉本:そうですねえ。

 

勝山:だからその在家の心がどうなんだろう? と。

 

杉本:やっぱり仏教心がなくなったとか、競争社会一辺倒で来ちゃったとか。急に真面目な話してますけど(笑)。何かこころの余裕、なくなっちゃたんすかね? と、自分に都合のいい論理ですけど。

 

勝山:余ってるわけじゃないですか。いらないものもあるわけじゃないですか。

 

杉本:確かに、確かに。あります、あります。

 

勝山:でも、あいつらにだけはやりたくない、1円も。ということでしょう。

 

杉本:震災被災の時には山ほど自分の衣服あげたいとかいうのがありましたけどね。あれも家の処分だな、とピンと来るのもあるんだけど、実際、家のものの処分だってこっちにはヤダろうね。

 

勝山:ははは(笑)。

 

杉本:うん。もう処分困って。でもやるくらいだったらゴミで出したいだろうな。

 

勝山:そういうことなんです。ゴミで捨てるんです。

 

杉本:絶対そうだなあ。「何で働かない奴にやらにゃいかんのか」って。

 

勝山:そうそう。でも何て心が狭いというか、どうしてそこまでして意地悪にするんだろう? って。

 

杉本:いやあ、でも勝山さん。われわれ、こういう調子でしゃべってるから腹立たしいんですね(笑)。

 

勝山:でもね、だからそういうことなんですよ。私たちが話して、これをインタビューにするわけじゃないですか? インタビューにして記事にするわけじゃないですか。これを「おもしろい」と思うか「けしからん」と思うか。在家の問題なんですよ。これを見ておもしろいと。こういうのもあっていいと思う余裕があれば、それはそれで文化とか芸術とか、自分たちが芸術だとは思ってないけれども(笑)。そういう社会の余裕とか、豊かさが生まれてくるんです。ねっ? ただこういうインタビューの記事がアップされているのを見て、時間の無駄だとか、こんなやつらがいるからダメなんだと思うようだと、社会はどんどんキツくなっていく。

 

杉本:まあ、ウチの親もまさにそういうキャラでしたよ。

 

勝山:そういう心の持ちようがそろそろ話題になるかなって思ってますね。

 

杉本:そうですね。ちょっと偏った真面目さといいますかね。

 

勝山:真面目なのかな? でも世の中全体がキツくなってくのはこういうものに真顔で怒って、これはけしからん、って例えばこういうインタビューが世の中からひとつもなくなっちゃったら世の中は逆にキツくなっていく。いまキツイなと思いながらいやいや働いている人も、もっとキツくなる。

 

杉本:うん。笑えない。

 

勝山:何にも笑えないし、ゆとりがない。それを望んでるならいいけど、たぶん望んでない。にもかかわらず、こういうのを無くそうとして。

 

杉本:みんな望んでないでしょう。やはり本音は人のストリップはみたいしね。人の情けないところは知りたいし。でも、そこも戦略ですね。太宰治臭のある人たちがどれだけいるか、ということにかかりますかねえ。やっぱり笑える余裕が必要だよね。

 

勝山:そうですね。

 

ブッダ以外の出家者たちを、在家はどう考えるか

 

杉本:すると小説家。太宰なんかも出家かな?

 

勝山:出家ですよ。だからもう、芸術家もアインシュタインもエジソンも出家ですよ。

 

杉本:うんうん。こりゃすごいな。大きく出ましたね。こりゃ(笑)。

 

勝山:あの人たち全員出家ですよ(笑)。でも出家の99%はエジソンじゃないですよ。ブッタでもないですし、アインシュタインでもないですよ。そういう人は、0.00001%だけですよ。2500年にひとりがブッダなんですよ。そこを在家の人たちがどう受けとるかですよね。

 

杉本:ブッダも無責任ちゃ無責任だもんね。本来王さまになる人が役職放りだして逃げちゃったんだもんねえ。

 

勝山:でもブッダみたいにありがたい言葉を言ってくれれば在家の人たちも納得じゃないですか。

 

杉本:そうですね。

 

勝山:でも、ブッダ以降2500年、誰も出てないわけじゃないですか。そこがねえ。

 

杉本:ガンジーなんかはどう?

 

勝山:ガンジーはいい感じですね。一遍上人もいい感じですからね。

 

杉本:いますよね。そう考えたらね。

 

勝山:時どき出てるんですよ。だから「出家いいね!」ボタン押してくれる人がいればいいんですけどね。

 

杉本:やっぱりそう考えると共育学舎の三枝さんとか、「野の賢人」というんですかねえ。目立たないところに賢人ありで。そういった人たちを僕らは探すしかないですかね。

 

勝山:三枝さんは在家のトップなんじゃないかな、と思ってね。

 

杉本:在家か。出家じゃないんですね。

 

勝山:たぶんだから私に食べさせてくれたり、泊めてくれるのは、在家業界のトップにいるからだと思うのね。

 

杉本:ああそうか。経済力があるという意味でね。

 

勝山:経済力というか、まあ自分で畑をやってたり。で、無料で学校借りてたりするから。無料で分けられるんですね。要は余っているものを分けるということができるという意味ですね。

 

杉本:うん、そうですね。余っているものに気がついて、余っているものを確保して。困っている人を助けるという。

 

勝山:そうそう。

 

杉本:すごいね。

 

勝山:あんまり困ってないですけど。私はね(笑)。

 

杉本:でもいろいろな準備として。

 

勝山:うん。

 

杉本:ま、何というのか、この界隈の知識人としてね。先駆的に。いや~、今日はいい話を沢山聞けまして。本当に考えることが多々ありますね。

 

勝山:ええ。

 

杉本:う~ん、何か面白いアレが浮かんだんだけど。ちょっと忘れちゃったな。まあ、また改めて。

 

勝山:ひと言ですごいこと言いましたね(笑)。

 

杉本:えっ?

 

勝山:「おもしろいこと浮かんだんだけど忘れちゃった」(笑)。大変なことですよ。

 

杉本:本当にこう、勝山さんのような人の話を聞くとぴんぴんピン、といろいろ思い出すんですけど。すぐ忘れちゃうんですねえ。まあちょっと僕もボケるのが早いタイプだろうと思っていて。

 

勝山:いっぺんに2つも3つも考えるからだと思いますよ。

 

杉本:ああ、なるほど。

 

勝山:うん。

 

杉本:そっか~。まあ、だからレコーダーもね。

 

勝山:(笑)そう。

 

杉本:ほかのこと考えちゃうから。

 

勝山:閃くんですよ。閃くタイプだと思います。

 

杉本:閃くのかな?とにかく何かぼんやりと、薄ぼんやりと様ざま考えるのは確かです。

 

勝山:複数思い浮かぶタイプですね。

 

杉本:う~ん。ありがとうございます。何か最後はわかりやすい形でほめていただいた気がします。

 

勝山:いえいえ、とんでもないことです(笑)。

 

杉本:何か名残惜しいですけど。また是非機会がありましたらお付き合いいただければ。

 

勝山:はい。ぜひ。今日はありがとうございました。

 

(2016年2月6日 スカイプにて)

 

 

三枝 孝之さんーNPO共育学舎/パン工房木造校舎 代表

 

「僕のことを嫌うのはやめろ」ー『ひきこもる心のケア』P.12

 

スストー同上 P39

 

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